表層を纏う身体、芯をかたどるアート

服を纏うこと、形にすること

モデルはその服が持つ世界観やデザイナーの意図を自分の身体を通すことによって表現します。ボージングや表情、身体の動きによって、同じ服でも違うストーリーや見方を生み出すことができるのは、難しくもありとても面白い瞬間です。

一方で作品をつくる時は、素材に触れながら自分の内側にあるイメージを少しずつ形にしていくという別の感覚があります。すでにある物を自分なりの解釈と方法で誰かに魅せるモデルという職業と、脳内に眠る構想を一から自分の手で形にすることで、誰かに届けるというデザイナーとしての繊細な作業。
その両方を経験しているからこそ、単に美しく見えるものではなく、実際に身につけた時の感覚にもこだわり、着る人の個性が引き出されるようなものをつくりたいと思っています。

Cera Gigiにとってデザインするということ。
自身の手掛けるブランドを「Wearable Art」と定義する理由。

CERAGiGiでは自分のイメージを形にするだけではなく、制作の過程で生まれる偶然やその作品にしか出し得ない個性も含めて、一つのアートピースとして表現したいと思い、「Wearable Art」と位置づけました。

私にとってアートは自分でも想像していなかったものが生まれる瞬間であり、そこにアートの面白さを感じます。偶然や発見によって、自分の手掛ける作品が自分の想像を超えていく、まさにその感覚が私にとってアートに近かったんです。CERAGiGiでは、最初から完成形を決めすぎず、実際に手を動かしながら素材と向き合うことで生まれる、予想外の美しさを最も大切にしています。

また色やデザインも、アースカラーをベースとしながら、時には明るい色や意外性のある組み合わせを取り入れています。色づかいは主に、フィリピン、インド、ケニアにインスパイアされました。

ーCera Gigiは日本で生まれ育ち、日本とネイティブアメリカンのルーツを持っています。日本の自然観や、伝統的な柄、伝統工芸にはいつも魅了されてきたといいます。それに加えて、モデルとしての活動や一人旅をする中でもさまざまな国や文化に触れ、多様な人々にも出会ってきました。こうした背景から、それぞれ異なる形の中で絶妙な色彩を帯び、複数の視点が絡み合ったユニークな作品が生まれているのです。ー

彼女は、「自分がこれまで見てきた景色や感じてきたこと、そしてこれから出会う物事にも向き合いながら、自由に自分だけの表現で作品を生み出していきたいです。」と語っています。

東京とマニラ。異なる街で見た景色と得た感覚が創造の幅を広げる。

私はヴィンテージ巡りやリサイクルショップに行くことが好きで、面白い生地や素材を見つけると自然と頭のなかにイメージが浮かびます。「この生地を使って鞄をつくったら面白いのではないか、この素材を別のものと組み合わせたらどんな形になるんだろう」と想像を膨らませます。
また作品へのインスピレーションが湧くのは、必ずしも特別な場所や出来事からではありません。移動中に見つけた光や古い建物の壁の色、道端にある植物、街をゆく人々の服装など、普段なら見過ごしてしまいそうな瞬間にも心が動くことがよくあります。

旅をして異なる街を行き来するなかでも、自分の中の感覚が少しずつ変化していき、その変化自体が作品に反映されていると考えています。特に東京で生まれ育った私にとってマニラは、とても別世界で新鮮な街でした。マニラは、自分の美意識に多様性を与えてくれた場所でもあります。そこは東京よりも騒がしく、汚く、カオスで安全ではない。しかし、そんな街がなぜか私を安心させてくれるんです。不便で不安全で貧困な国だからこそ、助け合うことが当たり前な文化がフィリピンにはあり、だからこそ人々からの愛と真の優しさが、”いつでも誰かと繋がっている”という安心感を与えてくれます。

生活をするなかで、いつも便利であるべきだとは限らないということをこの街から学びました。マニラには東京では得られない体験がさまざまあり、クリエイティブ業界やファッションの現場でもそのカルチャーを肌で実感しました。そしてそこで生まれるクリエイティブな作品は私に大きな刺激を与えてくれました。こうした旅先で感じた空気や美しさを自分のフィルターを通して、創造の場での表現に変えていきたいと思ってます。

デジタルな時代だからこそ、人の温もりを感じられる物づくりを

昔から人の手によってつくられたものに強く惹かれてきました。そこにはつくり手の時間や感情、少しの揺らぎや偶然が刻まれていて、完成したものから”人間らしさ”を感じられるからです。
私たちは縄文時代から今日に至るまで、さまざまなものを自分たちの手でつくり、暮らしや文化を築いてきました。手仕事には、単に形を生み出すだけでなく、その時代を生きた人々の感覚や知恵、想いを受け継ぐ力があると思うんです。
デジタルの技術には、アイデアを素早く形にしたり、今までにない表現を可能にしたりする魅力があります。その一方で、実際に素材に触れ、自分の手でつくることは、最新の技術では得られない発見が数々あります。服づくりにおいては、布の柔らかさや重さ、素材同士を組み合わせた時の違和感、手を動かす中で偶然生まれる形など、実際に触ってみることで初めて気づくことがたくさんあります。
私は、AIをはじめとするデジタル技術が発展していく現代だからこそ、効率や正確さだけでは置き換えられない人の手が生み出す揺らぎや温度を大切にしたいと思っています。技術の進化を否定するのではなく、共存しながらも、人が自らの手でつくる事の意味や人間らしさが失われないでほしいと願っています。

ーAIに越えられない唯一のものは人間のクリエイティビティなのです。ー

作品との向き合い方、創造し続けるための秘訣

作品を制作する上で一番大切にしていることは、「自分の直感に正直でいること」です。

最初から完成形を細かく決めて、整えていくことよりも、素材に触れた時の印象やその瞬間に生まれた感情をそのまま形にしていくことに重きを置いています。時間をかけすぎてしまうと、最初に感じたものから離れてしまうことがあるので、直感を失わないうちに形にすることを心がけています。
また無理に作品をつくろうとしないことも大切にしていることの一つです。意欲が湧かない時や、疲れている時は、無理に始めようとせず休むことを選びます。作品は、手を動かせば生まれるものではなく、その時の自分の感情やエネルギーも反映されるものだと私は考えています。外に出て新しい景色を見たり、人と会ったり、何もせずに過ごしている時間も、創作の一部だと思っています。そうした日常のなかで得た感覚が自然と次の作品づくりにも繋がっています。
自分の感覚に正直でいることは、自然と何かをつくりたいと思える瞬間を大切にすることであり、それがより良い作品をつくる秘訣でもあります。


ー最近ではファストファッションに対抗する概念として、「スローファッション」という言葉をよく耳にするようになりました。ー

一つ一つの素材を大切にし、一点物の魅力をアートとして表現する Cera Gigiにとって対極にあるファッション概念への考えとは

私は言葉として分類するよりも、一つのアイテムをどれだけ長く大切にできるかが重要だと思っています。たとえファストファッションであっても、本当に気に入って何年も着続けるのであれば、それも一つのサステナブルな選択だと思います。個人的には生地の質感や素材のクオリティーにこだわりがあり、自然と長く使える質のいいものを選ぶことが多いので、ファストファッションを積極的に購入することはあまりありません。ただ、価格やブランドだけで良し悪しを決めるのではなく、本当に自分の好きだと思えるものを選び、長く使い続けることが大切だと考えています。流行に乗り、次々に新しいものを買い替えるのではなく、一つのアイテムを自分らしく着こなしながら長く付き合っていく。そういうファッションの楽しみ方を大事にしていきたいです。

なんでも手に入る現代において『本当の贅沢(ラグジュアリー)』とは

「好きな場所に行き、興味のあることを学び、さまざまな人や文化に触れる。自分の時間を自分が価値を感じることに使う。そういった本当にしたいことを”選択できる自由”が、一つの贅沢ではないかと思います。」

「物を持つことにも魅力はありますが、物の価値は価格だけで決まるものではないと思っています。これからの時代はどれだけ多く物を持っているかよりも、自分にとって何が大切なのかを知り、それを自分の意思で選べることが本当の贅沢なのではないでしょうか。」

怖いもの知らずであることが私の原動力、目的を果たす為のマインドの持ち方

私はやりたい事や行きたい場所があれば、すぐに行動に移します。実際にやってみないと何が起こるか分からないからこそ、知ってみたいんです。そういった怖いもの知らずであることも原動力の一つだと思います。一度やる事を決めたら、「どうなってしまうのか、もしも上手くいかなかったらどうしよう」といった余計なことはあまり考えません。決めたからには、それを実現するために何ができるかを一番に考えます。
私は不安という感情も必ずしも必要なものではないと思っています。もちろん、危険から自分を守るために必要な感情ではあります。私たち人間も動物として、危険を察知し、生き延びるために不安を感じるようになったのだと思います。しかし、命の危険があるわけでもないのに、まだ起きていない事を想像して、自分の行動に制限をかけるのはもったいないと感じるんです。不安になるために使うエネルギーがあるなら、これから起こるかもしれない事にワクワクするために使いたい。私はそう考えています。
10代の頃にモデル活動を始め、早い時期からファッションや撮影の現場に関わり、SNSを通じて海外のクリエイターやさまざまなカルチャーと繋がる中で、自分が思っていた以上に世界は広く、可能性も無限にあると感じました。

CERAGiGiというブランドも、そういった好奇心や行動力から誕生しました。最初からすべて分かっていたわけではありません。ただ自分が面白いと思うことや、やってみたいという気持ちに素直に向き合ってきた結果が、今のなりたい自分へと繋がっています。
これからも自分自身を信じて、未知の世界に飛び込みながら、自分にしかできない表現や生き方を見つけていきたいです。

Cera Gigiの描く未来像

私が自分の活動を通して発信していきたいのは、「目に見えるものやすでに存在する価値観だけを信じるのではなく、自分の想像力を使って、可能性を広げていこう」というメッセージです。
社会の中で知らず知らずのうちに、こうあるべき。これはこういうものだ。という枠を無意識につくってしまうことがあります。でも見方や考え方を変えるだけで、違った価値観や可能性を生み出すことができると思うんです。私自身、アートやものづくりを通して、既にあるものに新しい解釈を加えたり、想像をしていなかったものが生まれる面白さを体感してきたことで視野が大きく広がりました。
だからこそ、私の創造する作品が、『今ある枠にとらわれず、まだ見ぬ可能性を探してみよう』と思うきっかけになれたら嬉しいです。目にみえるものがすべてではないし、世界には自分たちがまだ想像できていない可能性がたくさんあると信じています。

”何が”できるかではなく”何を”今すべきか
Cera Gigiから読者へ贈るメッセージ

それぞれの心の中にある「好き」という気持ちを最初から小さく見積もらないでほしいです。

周りと違うことや、まだ誰もやっていないことに挑戦するのは、不安になることもあると思います。自分に何ができるのか分からなかったり、経験やスキルが足りないと感じたりすることもあるかもしれません。しかし、すべての準備が整うまで待つ必要はないと思っています。興味があることを調べてみる、小さな作品を作ってみる、誰かに連絡してみる、行きたい場所に行ってみる。小さな行動の積み重ねが、自分の世界を少しずつ広げてくれます。私もモデルとして活動するなかで新しい世界を知り、自分で何かをつくりたいと思うようになりました。今も学びながら、試行錯誤を続けています。
自分のルーツや経験は、誰かと比べる為のものではなくて、「自分にしかない視点を育てるもの」だと思います。完璧な自分になることを目指すよりも、今の自分だからこそできる表現を大切にしてほしいです。


[✴︎Artist Profile]
– Cera Gigi –
日本生まれ日本育ち。日本とネイティブアメリカンのルーツを持つモデル、アーティスト、デザイナー。10代からモデル活動を始め、現在はモデルとして活動する傍ら、自身のブランド「CERAGiGi」を展開。CERAGiGiでは、アップサイクル素材や異なる文化から着想を得たテキスタイル、手仕事によるアクセサリーなどを通して、ファッションとアートの境界を探求。大量生産では生まれない一点物の魅力や、素材に新たな価値を与えるものづくりを大切にしている。
また東京やマニラをはじめとするさまざまな場所での経験を創作に取り入れながら、モデル、アーティスト、デザイナーという複数の視点から、自分らしい表現を追求している。