「TALANTO」を手掛けるジュエリーデザイナーRikoの脳内にあるパピエ・コレを紐解く。
“2018年からスタートした「TALANTO」ですが、『Shaped Personal Story』というテーマのもと、今も一貫して、個人的な日記を綴ったようなモチーフのアイテムを制作し続けています。発想源はいつも自分の感情や思考、そして記憶など、日常のなかで起こる自然なところにあります。愛犬を亡くした時は、犬をモチーフにしたコレクションを制作したり、作品のアイデアが浮かばず、人間関係に悩んでいた時はその感情をそのまま落とし込み、渦巻きの形をしたアイテムが完成しました。リアルなその瞬間を形にアウトプットすることで、自分以外の誰かが共感してくれたり、興味を持ってくれる。そのやりとりが楽しくて、あっという間に8年の月日が経ちました。”


ーTALANTOのジュエリーには、単に身につけるものではなく、素直に人の心に寄り添ってくれる温かさがあります。ー
心と会話し、感情が形になるまで
「Dig Collection」は会社に勤めていた時、体力的にも精神的にも限界がくると、よく宇宙に関するドキュメンタリーシリーズを見て、現実逃避していました。そこに出てくる地層や鉱物を掘っていく映像が印象的で、『宇宙という未知へのロマンへ思いを馳せる』というテーマで制作しました。

「Smiley collection」を制作したのは、ちょうど会社を辞めたタイミングでした。私は気を抜くと卑屈になったり、すぐ後ろ向きに考えてしまうのですが、時には無理やりにでもボジティブに考えたり、笑顔でいることってすごく大事かもと思ったんです。その気持ちを忘れないように身につけるもので、スマイリーモチーフをつくってみようと思いました。
そこから派生して、去年失恋した時には『Sad Face』を作ってみたり、いつも笑顔でなくても良いのかもと思った時には、4つの顔を毎日気分で切り替えられる『Mood Ring』というものをつくったりもしました。


「Gem Stone Collection」は、2024年にロンドンへ移住してからつくったコレクションです。
それまでTALANTOでは、石を使ったジュエリーはあまりつくっていなかったのですが、伝統的な石留めの方法以外に、ジルコニアという人工の石を使った石留めの方法があることをこの時、新たに学びました。ロンドンをはじめ、ヨーロッパの冬は長くて暗く、鬱になる人も少なくないため、ビタミンの摂取は必須です。私も太陽がない冬はこんなにもしんどいのかと実感しました。ですがその代わりに春めいてくると、人も植物も途端に浮かれて、街が突然色づき始ます。そのワクワクをくれる時期が好きだったので、私も色のあるジュエリーを色石を使ってつくってみようと思ったんです。


机の上のパピエ・コレ


ここが私の作業スペースです。壁には友人のアートや大事な手紙、写真などを飾っていて、いつもここからパワーをもらっています。不思議と作業にも集中できます。
また大学では、道具を作るところから教わりました。道具は使う物ではなく、使いやすいように自分でカスタムしていく。その当時から自分の手に馴染んだものを今でもずっと愛用しています。2024年にロンドンへ移住した際も、重いマシーンを含め、日本からすべて荷物に詰め込んで持っていきました。私は制作において、正解の作り方などないと思っているので、自分に合った道具で制作方法を探っていく毎日を過ごしています。


Inside Her Head
〜頭の中をコラージュする3つの断片〜
2022年に初めて長期でロンドンに行った際、アートスクールに通っていたのですが、授業の一環として先生が展示に連れて行ってくれました。これはその時、Barbican Centre(訳:バービカン・センター)で行われていた、*Carolee Schneemann(訳:キャロリー・シュニーマン)の個展で購入した本です。パフォーマンスアートが有名な彼女ですが、この本は生い立ちから始り、さまざまな絵画やアートに触れ、自らの視点でアウトプットしてきた彼女が、女性ならではの表現を強く示していった過程をインタビュー形式でまとめた一冊です。愛猫やパートナー、自分の月経までを作品として表現し、パーソナルな出来事もすべて作品に変えていくというプロセスが面白くて、いまだに読み続けています。
*Carolee Schneemann…舞台上をキャンパスとし、身体と絵の具、食物や物体などさまざまな素材を融合させ、フェミニズム思想の前衛ともいえる刺激的な身体的ジェスチャーを用いた作品を数々生み出したアーティスト、画家。


時間がある時は、ビデオゲームをよくしています。特に任天堂のゲームが好きで、ゼルダの伝説やどうぶつの森、リズム天国などを3DSとNintendo Switchを使い分けながらプレイすることが私の癒し時間です。実況を見るのも好きなので、家にいる時は常にYouTubeでゲーム実況を見ています。
音楽は好きなものが多すぎて答えるのが難しいですが、「安住紳一郎の日曜天国」というラジオ番組は長い間聴いています。毎週日曜日の朝に、アナウンサーである安住さんとアシスタントの中澤さんがやられている番組なのですが、安住さんのプロとしての抜群のトーク力と時々垣間みえる毒っけや本音がたまらなく面白くて、3年前くらいからほとんど欠かさず毎週聴いています。
胸に刻まれた記憶の断片

2026年の夏に、イギリスの田舎町 *Lancingに行った時の写真。稲穂が広がる農場の小道を友人と一緒に散歩した時の記憶が思い出として、鮮明に残っています。たわいもない会話とゆっくりと流れる時間のなかで見たこの景色は一生忘れないと思います。
*Laucung…イギリス南部のイングリッシュ海峡とサウス・ダウンズ国立公園の間に位置するイギリス最大の村といわれる場所。


またこれは、先月台湾の台南に行った時の写真です。
旅の目的は、マングローブの森をボートで巡る30分のツアー。天気にも恵まれて、ツアーを共にしたみんなでお揃いの伝統帽子を被り、ボートに乗り込みました。台南には4日間滞在しました。毎日お腹いっぱいになるまで美味しいものを食べ、目的なしに散歩したりと、都市の魅力にもたくさん触れることができ、とても良い旅になりました。今後はもっとアジアの国も旅したいです。
旅先で拾った小さな出合い
現在、イギリス・ブライトンのビーチで集めた、小石を使ったジュエリー制作に励んでいます。
これまでヨーロッパで2度の夏を過ごしましたが、その間数えきれないほどビーチを訪れました。私は泳げないので、海の中に入ることはほとんどありませんでしたが、浜辺で石や貝殻を集めながらゆっくりとした時間を過ごしていました。特にブライトンの浜辺の石は、見れば見るほどにその小さな石のなかに豊かな色彩やユニークな形を発見できるので、それが面白くて気づいたら何時間も経ってしまいます。それだけ時間を忘れて夢中になれたヨーロッパでの夏は私にとって特別な思い出となり、日本に帰国したらこの思い出のかけらを必ずジュエリーにしようと思っていたんです。
今月10月30日と31日の2日間限定で、表参道のSEASON VOICE STUDIOにてPOP UPを開催予定なのですが、そこで現在制作中の新作をお披露目したいと考えています!


[✴︎Artist Profile]
– Riko Ko –
2019年 武蔵野美術大学工芸工業デザイン 金工専攻を卒業
在学中に自身のブランド「TALANTO」を立ち上げ、同時にモデルとしても活動も開始。
2024年にはロンドンへ拠点を移し、2年間現地で活動を両立。
2026年の8月に本帰国し、現在も精力的に自身の活動に取り組んでいる。
HP: https://talanto.online/
Instagram: https://www.instagram.com/t.a.l.a.n.t.o/
*References:MoMA「Carolee Schneemann」
https://www.moma.org/artists/7712-carolee-schneemann
Date Viewed:26.10.14